大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和39(オ)1328 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人吉田司郎、同若山資雄、同木村信雄の上告理由第一点について。

原判決は、「訴外D株式会社は、廃業のため、一債権者である被控訴人(上告会

社)に財産全部を譲渡し、その代金の半額以上をその債権と相殺するの利益をはか

つたことが明らかであるから、外観上相当価格による本件売買行為といえども、詐

害行為の成立を阻却すべき特別の事情にはあたらない」旨認定判示しているが、乙

の点に関し被上告人らから明示の主張がなかつたことは所論のとおりである。しか

し、被上告人らは、原審において、右事実認定の資料となつた原判決挙示の証拠を

提出援用することによつて、当該事実を黙示的に主張したものと解せられなくはな

い。したがつて、原審が当事者の主張しない事実について判断したと論難する所論

は、採用できない。

同第二点について。

債務超過の債務者が、特にある債権者だけに優先的に債権の満足を得させ、他の

債権者を害する意図のもとに、自己の有する不動産あるいは重要な動産を右債権者

に売却して、右売買代金債権と同債権者の有する債権とを相殺する旨の約定をし、

同債権者も、これにより他の債権者を害することを知つて買い受けたときは、たと

い右売買代金が適正価格であるとしても、右売却行為は民法四二四条所定の詐害行

為に当るものと解するのを相当とする(最高裁判所第三小法廷昭和三九年一一月一

七日言渡判決、民集一八巻九号一八五一頁参照)。本件において、原審の認定した

ところによれば、訴外D株式会社は、債務超過の状態にありながら、原判示の事情

のもとに、全財産ともいうべき本件物件を一括して代金九〇〇万円で上告会社に売

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却し、右代金のうち五〇〇万円は、以前訴外会社が上告会社から五〇〇万円の融資

を受けていたので、これと相殺勘定としたが、訴外会社は、右行為により、多数債

権者のうち得に上告会社だけに優先的に債権の満足を得させ、他の債権者を害する

意図に出たものであり、上告会社もまた、その情を知りながら本件物件を買し受け

たというのてある。したがつて、たとい右売買代金が適正価格であるとしても、右

売買契約は詐害行為に当ると解すべきであり、結局これと同趣旨に出た原審の判断

は相当である。所論は、原審の認定しない事実を前提とし、独自の見解に基づき原

判決を攻撃するものであつて、採用できない。

同第三点について。

原審が認定した事実関係のもとにおいて、訴外会社が上告会社に本件物件を売却

した行為が詐害行為に当ると解すべきことは、前段に説示したとおりであり、たと

い売買代金の一部が訴外会社の他の債権者に対する損害賠償債務の弁済に充てられ

たとしても、該事実は右の結論を左右するものではない。これと異なる見解に基づ

き原判決の理由そごをいう所論一は理由がない。

また、原審の証拠関係によれば、本件物件の売却行為が債権者を害することにつ

き上告人が善意であつたとは認められない旨の原審の判断は是認できる。審理不尽

をいう所論二は、結局、原審の認定と相容れない事実を前提とし、原審の専権に属

する事実の認定を非難するに帰し、採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の

とおり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

裁判官 草 鹿 浅 之 介

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裁判官 城 戸 芳 彦

裁判官 石 田 和 外

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